第6章|痛みと制度の壁──見えない苦しみの現実
神経性の痛み、効いた薬・効かなかった薬
手術後、動きは少しずつ回復してきました。
けれど「痛み」だけはまったく消えてくれません。
胸の奥や背中、特に肩甲骨まわりに、針で刺されるような痛みが走る。
お尻や太ももには焼けるような灼熱感。
足先は分厚い靴下を履いているように常に痺れています。
医師からは「神経障害性疼痛の可能性が高い」と説明を受けました。
プレガバリン、チザニジン、リボトリール、メチコバール──いろいろ試しましたが、効き目は限定的。
以前使っていたトラムセットやロキソニンも、体に合わず副作用が怖くてやめました。
薬を飲んでも痛みが完全に消える日はなく、「痛みと共存する」しかない現実を突きつけられました。
動くことをやめない、という選択
それでも私は「動くこと」をやめませんでした。
ストレッチや軽い有酸素運動を続けていると、不思議と痛みが少し和らぐ瞬間があるからです。
もちろん、全然楽にならない日もあります。
それでも「動けば少し楽になるかもしれない」という希望があるだけで、気持ちは救われました。
動けるうちは動く──その選択が私の支えになっています。
制度の盲点──“見えない痛み”は証明しにくい
もうひとつの壁は「制度」でした。
痛みや痺れで日常生活に大きな制限があっても、それは数値で証明できません。
歩けるから障害者手帳の対象外。
外見上「普通」に見えるから、理解されにくい。
実際、医療費や生活費の不安は常につきまといます。
ロキソニンテープひとつ取っても、もし保険が効かなくなれば月に2万円近い出費。
年金や医療制度のニュースを目にするたびに、「健康でいることが一番の資産だ」と痛感します。
制度は誰かを守ってくれる一方で、誰かを取りこぼす。
その現実に直面したとき、僕は「健康で働けること」そのものが、どれほど価値のあることかを思い知りました。
👉 [脊髄腫瘍 闘病記シリーズの目次へ戻る]
https://ryublog11.com/disease%e3%83%bbhealth/table-of-contents-for-spinal-cord-tumors
📖 脊髄腫瘍 闘病記シリーズ
- 全体像・目次
- 序章|「背中の違和感」から始まった物語
- 第1章|背中が告げた異変
- 第2章|手術の日
- 第3章|目覚めと入院生活
- 第4章|もう一度走る──100日目の挑戦
- 第5章|働き方を選び直す
- 第6章|痛みと制度の壁
- 第7章|「普通」に見える非日常
- 第8章|価値観の変化
- 第9章|読者へのメッセージ
- 最終章|痛みと歩幅、そしてこれから
