第3章|目覚め、動かない足──入院生活の始まり
左足が動かない不安と主治医の言葉
意識が戻った瞬間、ぼんやりとした光が目に飛び込んできました。
「足を動かしてみてください」
主治医の声に反応して、右足は問題なく動いた。
けれど、左足は……まったく反応しませんでした。
「このまま動かなかったらどうしよう」
頭の中が一気に真っ白になります。
そんな僕に、主治医は落ち着いた声で言いました。
「時間が経てば回復しますよ」
その言葉を信じるしかありませんでした。
HCUの夜、痛みとイメージトレーニング
手術は約7時間。腫瘍は胸側にあり、背中から回り込むようにして摘出する大変な手術だったそうです。
「腫瘍はすべて取り切れました」
そう聞いて、胸をなでおろしました。
しかし、現実は厳しかった。
僕はHCU(高度治療室)に運ばれ、背中にはドレーンが差し込まれ、痛みで動くことすらできません。
痛み止めを入れているのに、背中の奥で脈打つような痛みが止まらない。
長い夜、目を閉じても眠れず、頭の中で左足が動くイメージを繰り返しました。
「動け、動け」
祈るように念じながら、意識が揺れ続ける夜を過ごしました。
歩行器とリハビリ、少しずつ戻る動き
数日後、左足が少しづつ動きだしました。
動いた瞬間、涙が出そうになったのを覚えています。
けれど、筋力は驚くほど落ちていました。支えがなければ立ち上がることすらできない。
「マラソンをやっていた自分が、歩くことすらできないなんて」
悔しさと情けなさで、胸がいっぱいになりました。
それでも、リハビリは始まります。
歩行器を押しながら、一歩ずつ病棟の廊下を歩く。
毎日の訓練は苦しく、情けなく、でもどこか希望に満ちていました。
「また走れる日が来るかもしれない」──そう信じて、何度も転びそうになりながら、歩き続けました。
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📖 脊髄腫瘍 闘病記シリーズ
- 全体像・目次
- 序章|「背中の違和感」から始まった物語
- 第1章|背中が告げた異変
- 第2章|手術の日
- 第3章|目覚めと入院生活
- 第4章|もう一度走る──100日目の挑戦
- 第5章|働き方を選び直す
- 第6章|痛みと制度の壁
- 第7章|「普通」に見える非日常
- 第8章|価値観の変化
- 第9章|読者へのメッセージ
- 最終章|痛みと歩幅、そしてこれから
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