退院は“終わり”ではありません。
家に戻って生活を始めてみると、通院・検査・薬代・リハビリ・交通費など、想像以上にお金と時間がかかります。
入院中は請求がまとまって見えるのに対し、退院後の費用は細かく、そして長く続くのが特徴。
私自身の経験も交えながら、「退院後に実際どれくらいのお金と時間が必要なのか」を整理していきます。
退院したら「終わり」じゃない。そこから始まるお金と通院の現実
手術が終わり、リハビリをがんばって、ようやく迎えた退院の日。
病室を出るとき、「これでひと区切りだ」と感じた人も多いと思います。
でも実際に家に戻って生活を始めてみると、そこからが本当のスタートでした。
- 定期的な通院や検査
- リハビリの予約
- 毎月の薬代
- 病院までの交通費
- 付き添いをお願いする家族の時間
「入院費を払えば終わり」ではなく、退院後もじわじわとお金と時間が出ていきます。
この記事では、退院してからかかるお金と通院の現実を、
自分の体験を交えながら整理していきます。
退院後にかかるお金は「見えにくい」のがいちばんの問題
入院中は「請求書」が見えやすい
入院中のお金は、ある意味わかりやすいです。
- 入院基本料
- 手術代
- 検査代
- 食事代
などがまとめて請求され、「〇〇万円かかった」と一目でわかります。
一方で、退院後のお金はもっと細かく、そして長く続きます。
退院後は「細かい出費」が長く続く
退院してからかかる主なお金は、例えばこんなものです。
- 定期診察の診察料
- MRI・CTなどの画像検査
- リハビリの自己負担分
- 痛み止めや神経系の薬代
- 湿布・サポーター・コルセットなどの補助具
- 病院までの電車代・バス代・ガソリン代・駐車場代
※特に、車いすを日常的に使っていれば、専用の車も必要になってきます
ひとつひとつは数百円〜数千円でも、
「毎月」積み重なるので、気づいたら家計への負担になっていきます。
毎月かかる「固定費」に近い医療費
定期診察と検査
退院しても、病気が「終わった」わけではありません。
- 〇ヶ月ごとの診察
- 年数回のMRIやCT
- 術後経過のチェック
こうした通院が続きます。
診察料そのものはそこまで高くなくても、検査が入ると一気に金額が上がります。
MRIなどの画像検査は金額が大きく、1回7,000円前後になることもあります。
リハビリと薬代
退院後のリハビリは、生活を取り戻すための大事な時間です。
ただ、リハビリにも自己負担があります。
- 身体機能を維持するためのリハビリ
- 歩行やバランス訓練
- 筋力トレーニング
これに加えて、
- 神経の痛みを抑える薬
- 筋緊張をやわらげる薬
- 睡眠や不安をサポートする薬
などを継続的に飲むこともあります。
1回あたりの金額はそこまで大きくなくても、
「毎月・毎回」払うとなると、家計簿にじわじわ効いてきます。
補助具・生活用品にもお金がかかる
見落としがちなのが、補助具や生活用品です。
- コルセットやサポーター
- 段差を補うスロープ
- 手すりの設置
- 椅子やベッドの買い替え
「退院して生活してみてから気づく不便さ」を埋めるために、
少しずつお金を使う場面が出てきます。
これらの費用は人によって必要度が大きく変わります。
私自身は該当しませんでしたが、生活環境によっては負担になるケースもあります。
リハビリ病院は「相性」と「方針」で大きく差が出る
私の場合は、リハビリ病院を手術の病院に探してもらいました。
ソーシャルワーカーさんに自分の希望するリハビリや方向性など詳細に伝えることで、ソーシャルワーカーさんもそれに見合うリハビリの病院を探してくださいました。
リハビリ病院は、病院により方針が異なるため、合う合わないなどが出てくると思いますので、自分の希望はなるべく、伝えておく方が良いと思います。
また、リハビリで診てもらえる期間や、そのあとの対応も病院によって異なってきますので、先々を想定して聞いておくことをお勧めします。
見えない「周辺コスト」も負担になる
通院にかかる交通費・時間
病院が近ければまだいいのですが、
電車やバスを乗り継いで通う場合、交通費も毎回かかります。
- 電車・バス代
- ガソリン代、駐車場代
- 体調が悪くてタクシーを使う日
そして何より、
- 病院までの移動時間
- 待ち時間
- 診察やリハビリの時間
これらすべてが、「時間コスト」として積み重なっていきます。
術後数カ月は頻繁に通院やリハビリに行く必要があるため、会社員の場合は、事前に
周りに伝えることで協力体制をつくるようにしておいてください。
特にリハビリなどは長期にわたって通院する必要があるので、わかる範囲で会社側に配慮して貰えるようにしておくことをおすすめします。
付き添いをしてくれる家族の負担
自分ひとりでの通院が難しいときは、家族に付き添ってもらうこともあります。
- 家族の交通費
- 家族の仕事を休んだ分の収入減
- 子どもの預け先の費用 など
お金だけでなく、家族の時間やエネルギーも使っていることを実感します。
私はひとりで通院していましたが、必要に応じて家族のサポートが必要になる方もいます。
仕事との両立で見えてくる「時間=収入」の問題
通院日は、丸一日仕事にならないこともある
通院の日は、思った以上に時間を取られます。
- 朝から病院に行く
- 診察まで1〜2時間待つ
- 検査やリハビリを受ける
- 会計でさらに待つ
これが終わる頃には、夕方近くになっていることも珍しくありません。
フルタイムで働いている人なら、有給休暇を使うことになりますし、
フリーランスの場合は「通院の日はほとんど仕事ができない日」になります。
病院によって異なりますが、医療費の後払いサービスを利用できる場合もあります。
私が利用していたケースでは、クレジットカードを登録しておくことで、診察後は会計を待たずに帰宅できました。ただし、その場では請求金額が分からず、金額は後日メールで通知される仕組みでした。
領収書も後日病院で受け取る形になるため、特に検査などを行った日は、高額になる可能性も踏まえて引き落とし口座の残高には注意が必要です。
フリーランスや自営業の場合のリアル
私自身、フリーランスとして働いているので、
通院=その日の売上はほぼない日、という感覚があります。
- 通院日が増える
- 仕事量を調整せざるをえない
- 1ヶ月トータルで見ると、収入がじわっと減る
※痛みでまったく動けない日もあり、実際に働ける日数は想像以上に限られます
お金は、医療費だけではありません。
「働けなかった時間」も、見えないコストとして確実に存在します。
制度を上手に使って「守り」を固める視点も必要
※ここでは、制度の名前だけに触れます。
具体的な条件や金額は、必ず最新情報を自治体や窓口で確認してください。
医療費の負担を軽くする制度
長く通院が続く場合、次のようなキーワードを頭の片隅に置いておくといいかもしれません。
- 高額療養費制度
- 医療費控除
- 自治体独自の医療助成
- 障害者手帳に関連する各種割引
- 自立支援医療制度
すべての人に当てはまるわけではありませんが、
使える制度があれば、「支出を減らす」という意味で大きな助けになります。
自立支援医療制度は原則として精神疾患が対象ですが、ケースによっては神経疼痛で適用されることもあるそうです。ただ、現実問題としてはハードルが高いのが現状です。
このあたりは、機会があれば別の記事で詳しく書こうと思います。
「制度を知っているかどうか」で差がつく
厄介なのは、こうした制度が
「自分から調べにいかないと、なかなか届かない」という点です。
- まずは自分の病名・状態でどんな制度があり得るのか
- 病院の相談窓口やソーシャルワーカーに一度聞いてみる
- 自治体のサイトでキーワード検索してみる
完璧に使いこなす必要はありませんが、
「どんな選択肢があるのか」を早めに知っておくことが、
退院後のお金の不安を少し和らげてくれます。
「お金」と同じくらい大切なのは、生活のペースづくり
退院後しばらくは「フルスロットル」に戻さない
退院してすぐに、
「早く元の生活に戻らなきゃ」と自分を追い込んでしまいがちです。
ですが、
- 通院
- リハビリ
- 体調の波
これらを抱えながら、いきなり全力で働くのはかなりハードです。
- 週〇日はしっかり休む
- 通院の日は仕事量を少なめにしておく
- 体調が悪い日は遠慮なく予定を調整する
といった「生活のペース配分」が、結果的には長く働き続けるための土台になります。
家計も「長期戦」の視点で見直す
退院後のお金は、一時的な出費ではなく、長期戦になりがちです。
- 毎月の医療費・交通費
- 仕事量の調整による収入の変化
- 家族の負担
これらを踏まえて、
- 固定費を少し見直しておく
- 無理のない貯金ペースを決める
- 「今すぐはできないけれど、いつか活用したい制度」をメモしておく
といった、現実的な家計の再設計が必要になってきます。
まとめ:退院はゴールではなく「新しい生活の入口」
退院してみて初めてわかるのは、
- お金は「入院費」で終わらない
- 通院とリハビリは長く続く
- 仕事や家族の生活とも、ずっと並走していく
という現実でした。
けれどそれは、「絶望的な話」だけではありません。
- 制度を知ることで、負担を軽くできる部分もある
- 生活のペースを整えることで、長く働き続ける道を作れる
- 家計を見直すことで、「守り」を固めることもできる
退院は、ゴールではなく「新しい生活の入口」だと今は思っています。
これから退院を迎える人も、
すでに退院して通院生活を続けている人も、
「こういうお金と通院の現実があるんだ」と、
頭の片隅に置いてもらえたらうれしいです。
