第4章|もう一度走る──100日目の挑戦
転びそうな「走り」からの再出発
退院してからの毎日は、まるで「新しい身体との交渉」でした。
歩くことはできるようになってきたものの、左足の動きはぎこちなく、地面を蹴っても次の一歩がスムーズに出ません。
「でも、もう一度走りたい」──その気持ちだけは捨てられませんでした。
手術から1か月後、公園の外周を恐る恐る走ってみました。
けれど、それは「走る」というより「転びかけながら前へ進む」ような動き。
左足が思うように上がらず、何度もつまずきそうになりながら、繰り返し何度も何度も練習しました。
散歩している人から見ると、決して走っているようには見えなかったと思います。
それでも僕の中では「走れた」という感覚がありました。
あの日、心の中に小さな炎が灯ったのです。
1km→3km→5km、距離が教えてくれたこと
練習は毎日続けました。最初は数百メートルで足が止まり、悔しさで涙が出そうになったこともあります。
けれど、少しずつ距離を延ばすことで「まだできる」と思える瞬間が増えていきました。
1km走れた日。
3kmに届いた日。
そして、100日目に5kmを走りきった日。
もちろん痛みはありました。左膝や股関節に突然力が抜けるような感覚が走り、「ここで終わりにしよう」とブレーキをかける必要もありました。
それでもゴールした瞬間、全身に達成感が広がり、「またひとつ、元の自分に近づけた」と思えたのです。
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📖 脊髄腫瘍 闘病記シリーズ
- 全体像・目次
- 序章|「背中の違和感」から始まった物語
- 第1章|背中が告げた異変
- 第2章|手術の日
- 第3章|目覚めと入院生活
- 第4章|もう一度走る──100日目の挑戦
- 第5章|働き方を選び直す
- 第6章|痛みと制度の壁
- 第7章|「普通」に見える非日常
- 第8章|価値観の変化
- 第9章|読者へのメッセージ
- 最終章|痛みと歩幅、そしてこれから
