第2章|手術の日
手術が決まってからの数日は、検査の連続でした。
採血、レントゲン、心電図……検査室をたらい回しにされるたびに、「本当にこの日が来るんだ」と現実が迫ってきます。
体よりも、気持ちのほうが先に疲れていました。
検査漬けの日々と、歩いて入る手術室
手術当日、想像と違ったのは「歩いて手術室に入る」ということ。
ドラマのようにベッドで運ばれるのかと思っていたら、自分の足で歩かされました。
長い廊下の先にある白い扉。扉を開けた瞬間、冷たい空気が肌を刺します。
手術室の中では、看護師さんたちが忙しく動き回っていました。
器具を並べる音、モニターの電子音──普段なら気にも留めない音が、やけに大きく聞こえました。
自分だけが場違いなところに立たされているようで、不安でたまりませんでした。
麻酔が落ちる瞬間を越えて
ベッドに横になり、麻酔科の先生が点滴をつなぎます。
「少しずつ眠くなりますからね」
そう声をかけられ、温かい液体が腕に流れ込むと、まぶたが急に重くなりました。
「本当に目が覚めるんだろうか」
最後に頭をよぎったのは、その不安でした。
視界がにじみ、音が遠ざかり、世界がゆっくりと暗く沈んでいく──。
そして、意識はぷつりと途切れました。
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📖 脊髄腫瘍 闘病記シリーズ
- 全体像・目次
- 序章|「背中の違和感」から始まった物語
- 第1章|背中が告げた異変
- 第2章|手術の日
- 第3章|目覚めと入院生活
- 第4章|もう一度走る──100日目の挑戦
- 第5章|働き方を選び直す
- 第6章|痛みと制度の壁
- 第7章|「普通」に見える非日常
- 第8章|価値観の変化
- 第9章|読者へのメッセージ
- 最終章|痛みと歩幅、そしてこれから
