第8章|価値観の変化──病気がくれた「もう一度」
小さな旅と、比べない生き方
脊髄腫瘍の手術を経てから、人生の優先順位は大きく変わりました。
以前は「出世」「収入」「他人との比較」が常に頭の片隅にありました。
同期の昇進や年収の差に心をざわつかせ、自分を追い立てるように働いていました。
でも、いまは違います。
痛みや麻痺を抱えて生きるようになってからは、他人と比べること自体に意味を感じなくなりました。
人にどう思われるかよりも、「自分が納得して生きられるか」を大切にするようになったのです。
だから、平日の人が少ない時間にふらっと出かける小さな旅も、私にとっては大きなご褒美になりました。
格安航空券を見つけて、近場の街へ行ってみる。
電車で数時間の温泉に出かけ、何も考えずに湯に浸かる。
「できるうちに、やりたいことをやる」──そのシンプルな選択が、いまの私を支えてくれています。
体内に残る2つの腫瘍と向き合う
実は、私の体の中にはまだ腫瘍が残っています。
ひとつは左股関節に2cmほど。これが大きくなれば、再び足が動かなくなるかもしれません。
もうひとつは腰に6cm。臓器に囲まれているため、今は症状は少ないものの、触れると飛び上がるほど痛みがあります。
どちらも良性の神経鞘腫ですが、摘出するには神経を切る必要があり、後遺症のリスクは高い。
「また手術かもしれない」──そう思うと、正直怖くてたまりません。
けれど、その恐れが逆に「いまできることを大切にしよう」という思いを強くしてくれます。
足が治ったらバイクで遠くへ行く、旅に出る──そんな夢を心の中に置きながら、毎日のリハビリに向き合っています。
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📖 脊髄腫瘍 闘病記シリーズ
- 全体像・目次
- 序章|「背中の違和感」から始まった物語
- 第1章|背中が告げた異変
- 第2章|手術の日
- 第3章|目覚めと入院生活
- 第4章|もう一度走る──100日目の挑戦
- 第5章|働き方を選び直す
- 第6章|痛みと制度の壁
- 第7章|「普通」に見える非日常
- 第8章|価値観の変化
- 第9章|読者へのメッセージ
- 最終章|痛みと歩幅、そしてこれから
