術後100日で5km走れた日。回復は“元に戻ること”ではなかった

脊髄腫瘍の手術から100日。
手術とリハビリを経て、まだ体には痺れや違和感が残る中で、私はもう一度走ることに挑戦しました。

5kmを走りきれたその日、感じたのは「元に戻った」という感覚ではなく、これまでとは違う回復の形でした。

この記事では、術後の体と向き合いながら、もう一度走れるようになるまでの過程と、その中で気づいたことを書いています。

目次

走ることが、こんなに難しいとは思わなかった

手術を終えて、退院したあと。
私は「また走れるようになりたい」と思っていました。

以前は、マラソンが当たり前にできていたからです。
42.195kmを走ることも、特別なことではありませんでした。

だから最初は、こう考えていました。

少しずつリハビリをすれば、
時間が経てば、
元の体に戻っていくだろうと。

でも現実は、違いました。


「走る」というより、「前に倒れないように進む」感覚だった

退院してしばらくしてから、
近所の公園で軽く体を動かし始めました。

最初は歩くことすらぎこちない。
左足は思うように動かず、踏ん張りも効かない。

それでも、ある日ふと「少し走ってみよう」と思いました。

結果は、走るとは呼べないものでした。

左足で地面を蹴っても、次の一歩が出ない。
つまづくように体が前に流れていく。
バランスを崩さないように必死で体を支える。

それは、走るというよりも、

「転ばないように前に進んでいる」状態でした。

周りから見れば、かなり不自然だったと思います。
でもその時の自分にとっては、

「前に進めている」
それだけで十分でした。


毎日続けるしかなかった

そこからは、ひたすら繰り返しでした。

1日1時間。
無理はしないけれど、やめない。

最初は数百メートルで限界。
足が重くなり、感覚が鈍くなり、バランスも崩れる。

でも、次の日も同じように動く。

その繰り返しの中で、
少しずつ距離が伸びていきました。

1km
3km
そして、ある日。


術後100日、5km走れた

その日は、特別な日ではありませんでした。
いつものように公園に行き、いつものように走り始めました。

ただ、その日は違いました。

途中で止まらずに走れている。
足の動きはぎこちないままなのに、前に進めている。

気づけば、5kmを走り切っていました。

走り終わったあと、しばらくその場で立ち尽くしていました。

達成感は、ありました。
確かにありました。

でもそれ以上にあったのは、

「戻ったわけではない」という感覚でした。


元の体ではない。それでも、ここまで来た

5km走れた。
それは事実です。

でも、以前の自分とは明らかに違っていました。

  • 左足は完全には戻っていない
  • 長く走ると力が抜ける
  • 膝や股関節に違和感が残る
  • 胸から下の痺れも消えていない

「走れるようになった」というより、

「走れる範囲を見つけた」という方が近い感覚でした。


回復とは、“元に戻ること”ではなかった

その時、初めて気づきました。

自分はずっと、

「元の状態に戻ること」を回復だと思っていたんだと。

でも実際には、

完全に元に戻ることはありませんでした。

体は変わったまま。
感覚も、動きも、以前とは違う。

それでも、

できることは確実に増えている。

この感覚は、これまでの「回復」という言葉のイメージとは違いました。


「できる範囲で前に進む」という考え方

この経験から、考え方が少し変わりました。

以前は、

  • 元に戻ること
  • 元と同じようにできること

を目標にしていました。

でも今は、

  • 今の状態でできることを広げる
  • 無理のない範囲で続ける

という考え方に変わりました。

これは走ることだけではなく、
働き方や生活にもそのままつながっています。


👉 このあたりの考え方は、こちらでも詳しく書いています
回復した“こと”と、戻った“こと”は違った
できなくなった自分と向き合った日――元に戻れなくなった先で、人生は静かに組み替わっていった


無理をすれば、また崩れる

もう一つ学んだことがあります。

それは、

無理をすれば、簡単に崩れるということです。

5kmを超えると、
左膝や股関節に力が入らなくなる感覚があります。

「もう少し行けるかも」と思って無理をすると、
次の日に動けなくなることもありました。

だから今は、

  • 余力を残す
  • やりすぎない
  • 続けられる範囲に抑える

ことを意識しています。


👉 体調と向き合いながら働くことについては、こちらで書いています
頑張るより、続ける。病気と共に働くという生き方。
無理を前提にしない働き方は、甘えではなかった


それでも、もう一度走れた意味

この5kmには、大きな意味がありました。

元の体に戻ったわけではない。
完全に回復したわけでもない。

それでも、

「できることはまだある」
そう思えたことが、一番大きかったです。

病気をきっかけに、できなくなったことは確かにあります。
でも同時に、

できる形を変えながら続けていくことはできる

ということも分かりました。


最後に

術後100日で5km走れた日。

それは、完全な回復ではありませんでした。
むしろ、元に戻れないことを受け入れた上での一歩でした。

それでも、その一歩は確かに前に進んでいました。

もし今、

「前と同じようにできない」と感じている人がいたら、

無理に元に戻ろうとしなくてもいいのかもしれません。

今の状態でできることを、少しずつ広げていく。

その積み重ねの先に、
気づけば「ここまで来ていた」と思える日が来るのだと思います。

🔗 関連記事

※✉個人的なご相談や非公開のご質問は、お問い合わせフォームからどうぞ。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

会計事務所・事業会社で約20年、税務・経理の仕事に従事。
40代で脊髄腫瘍を経験し、手術とリハビリを経て現在はフリーランスとして働いています。

このブログでは
・病気と働き方
・フリーランスという生き方
・人生の再設計
について実体験をもとに発信しています。

主なテーマ
・病気と回復
・働き方の再設計
・フリーランスの生活
・お金と生活防衛