「遅れること」への耐性

回復が遅い。
成果が出るのも遅い。
そして、ときどき、人生そのものが遅れているように感じる。

手術を終えて日常に戻ってからも、
時間の進み方は、以前と同じではありませんでした。

早く戻ろうとしているわけではない。
でも、周囲と同じ速度で進めていない感覚は、ずっと残っています。

── 回復が遅い/成果が遅い/人生が遅れている感覚と、その受け止め方

目次

回復が遅い、という感覚

「順調ですね」
「もう少しで元に戻りますよ」

そういった言葉を、かけられたことは一度もありませんでした。

代わりにあったのは、
「昨日よりできることが増えましたね」
「動きが少し良くなってきています」
という、変化そのものを確かめるような言葉でした。

それは、
ゴールを前提にした「順調さ」ではなく、
過去と比べて今どうかを見るための表現だったように思います。

回復は、一直線ではありません。
良くなったと思えば、翌日は動けない。
少し安定したかと思えば、また違和感が出る。

「もう大丈夫」と言える地点が、
はっきりしないまま時間だけが進んでいく。

この曖昧さが、
回復の遅さを、より実感させていました。


成果が遅い、という現実

働き方を変え、
無理をしないペースで仕事を続けるようになってからも、
別の「遅さ」が現れました。

成果が、なかなか形にならない。

以前なら、
頑張れば何かしらの反応や結果が返ってきた。
でも今は、手応えが見えるまでに時間がかかる。

周囲が前に進んでいるように見える中で、
自分だけが足踏みしているような感覚になることもあります。

「ちゃんと進んでいるのか」
「このやり方で合っているのか」

答えの出ない問いが、
頭の中に残り続けています。


人生が遅れている、という感覚

回復も、成果も、
どちらも「遅い」と感じ始めると、
その感覚は、人生全体へと広がっていきます。

同世代の話題。
仕事や家族、将来の話。

それらに触れるたびに、
自分はどこか、予定より後ろにいるような気がする。

焦っているつもりはなくても、
「取り戻さなければ」という感覚が、
無意識のところで顔を出します。

正直に言えば、
この感覚は、今も続いています。

まだ成果は出ていないし、
何かを成し遂げた実感もありません。

だから今でも、しんどい。

これは、
すでに過去になった感情ではありません。


焦らず受け入れる、というよりも

「受け入れられるようになった」と言えるほど、
整っているわけではありません。

焦らないようにしようと思えば、
かえって焦っている自分に気づいて、
自己嫌悪することもあります。

ただ、以前と違うのは、
この感覚から逃げなくなったことかもしれません。

早く戻る。
追いつく。
取り戻す。

そういった言葉を、
一度、横に置いてみた。

代わりに考えるようになったのは、
「今の速度でしか見えないものがあるのではないか」
という視点でした。


遅れているからこそ、見えてくるもの

動けない時間があったから、
考える時間が増えた。

成果がすぐに出ないから、
短期的な結果より、
構造や前提を見るようになった。

周囲と距離ができたから、
社会との関わり方を、
改めて考えるようになった。

遅れていることは、
欠けていることとは、少し違うのかもしれません。

ただ、
別の角度から世界を見る条件が、
そこにあるだけなのだと思うようになりました。


働き方・社会との距離感

この感覚は、
働き方や、社会との距離にもつながっています。

フルスピードで進むことを前提にした社会。
常に成果を求められる空気。

そこから少し距離を取ったことで、
自分に合わない前提が、
以前よりはっきりと見えてきました。

これは、まだうまく言葉にできていない領域です。

ただ、
遅れたことでしか得られなかった距離感がある、
その感覚だけは、確かに残っています。


おわりに

回復が遅い。
成果が遅い。
人生が遅れているように感じる。

この感覚は、
簡単に消えるものではありません。

今も、途中です。
しんどさも、残っています。

それでも、
焦りから目を逸らさずに、
この状態を観察し続けられるようにはなりました。

それが今の、自分なりの「耐性」なのだと思います。

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この記事を書いた人

会計事務所・事業会社で約20年、税務・経理の仕事に従事。
40代で脊髄腫瘍を経験し、手術とリハビリを経て現在はフリーランスとして働いています。

このブログでは

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について実体験をもとに発信しています。

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