病気やケガで医療費が高くなったとき、
「高額療養費を使ったら、医療費控除はもう使えないの?」
と疑問に思う人もいるのではないでしょうか。
結論からいうと、高額療養費制度と医療費控除は併用できます。
ただし、高額療養費として支給された金額や、民間の医療保険から受け取った給付金などは、医療費控除を計算するときに注意が必要です。
私自身、脊髄腫瘍の手術で約3週間入院し、高額療養費制度を利用しました。
さらに民間の医療保険から入院給付金や手術給付金も受け取っています。
また、以前は税理士事務所で確定申告業務に携わっていたため、医療費控除について実務で扱った経験もあります。
この記事では、
- 医療費控除と高額療養費の違い
- 2つの制度を併用するときの考え方
- 高額療養費で戻ったお金の扱い
- 医療保険の給付金を受け取った場合
- 医療費控除の対象になる費用
- 実際に申告するときの注意点
を、できるだけ分かりやすく整理します。
※この記事は2026年9月時点の制度をもとにしています。税務上の取り扱いや高額療養費制度は変更されることがありますので、実際に申請する際は国税庁、厚生労働省、加入している健康保険などの最新情報をご確認ください。
医療費控除と高額療養費の違い
まず、この2つは名前こそ似ていますが、まったく別の制度です。
簡単に整理すると、次のようになります。
| 医療費控除 | 高額療養費制度 | |
|---|---|---|
| 目的 | 税負担を軽くする | 医療費の自己負担を抑える |
| 対象期間 | 1月1日〜12月31日 | 原則1か月単位 |
| 手続き | 確定申告 | 加入している健康保険など |
| 基準 | 年間に支払った対象医療費など | 年齢・所得など |
| 効果 | 所得控除を受けられる | 限度額を超えた自己負担が支給される |
つまり、
高額療養費制度は「医療費そのものの負担を軽くする制度」
で、
医療費控除は「実際に負担した医療費などをもとに所得控除を受ける制度」
です。
そのため、どちらか一方しか利用できないわけではありません。
医療費控除とは?|一定額を超えた医療費を所得から控除する制度
医療費控除は、その年の1月1日から12月31日までに、自分や生計を一にする家族のために支払った医療費が一定額を超えた場合に受けられる所得控除です。
ここで間違えやすいのが、
「医療費控除額=その金額が税金として戻ってくる」
わけではないことです。
たとえば医療費控除額が20万円になったとしても、20万円がそのまま還付されるわけではありません。
20万円を所得から差し引き、その結果として所得税などの負担が軽くなります。
実際にどれくらい税負担が軽減されるかは、その人の所得や税率などによって変わります。
医療費控除の対象になるもの・ならないもの
医療費控除というと、病院で支払った診察代だけをイメージするかもしれません。
実際には、治療のために必要な一定の費用も対象になります。
たとえば、
- 病院で支払った診察・治療費
- 処方された薬などの費用
- 治療のために必要な一定の医療器具
- 通院のための電車・バス代
- 一定の条件を満たす入院費用
などです。
私も手術後は長期間通院しているため、医療費だけではなく交通費についても記録するようにしています。
電車やバスなどは領収書がない場合もあるので、
日付・利用区間・金額・通院先
などを記録しておくと、あとで集計しやすくなります。
一方、注意したいのがタクシーです。
通院にタクシーを使ったからといって、すべて医療費控除の対象になるわけではありません。
国税庁によると、電車やバスなどの公共交通機関を利用できない場合などを除き、タクシー代は対象になりません。
また、自家用車で通院した場合のガソリン代や駐車場代も対象外です。
高額療養費制度とは?|高額な医療費の自己負担を抑える制度
一方、高額療養費制度は、医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が一定の自己負担限度額を超えた場合に、その超過分が支給される制度です。
上限額は、年齢や所得によって異なります。
私の場合、脊髄腫瘍の手術と約3週間の入院で、医療費そのものは約180〜190万円規模になりました。
しかし、高額療養費制度などの公的医療保険の仕組みによって、実際に退院時に支払った金額は約18万円でした。
高額療養費制度については、実際の入院経験をもとにこちらの記事で詳しくまとめています。
高額療養費制度は2026年8月から変わっている
注意したいのは、高額療養費制度が2026年8月に見直されていることです。
月額の自己負担上限額が変更されたほか、長期療養者への負担軽減策として新たに年間上限が設けられました。
さらに2027年8月には、所得区分の細分化も予定されています。
そのため、
「年収○万円なら自己負担は必ず○万円」
と古い情報だけで判断しないことが大切です。
自分に適用される限度額については、厚生労働省や加入している健康保険の最新情報を確認してください。
高額療養費は「月単位」で考える
高額療養費制度でもう一つ知っておきたいのが、基本的に1日から月末までの1か月単位で計算されることです。
たとえば、
1月20日〜2月10日
まで入院した場合、1月と2月は別々に計算されます。
そのため、同じ程度の医療費がかかった場合でも、入院期間が1か月の中に収まった場合と、月をまたいだ場合では自己負担額が変わることがあります。
ただし、医療費を抑えるために治療や退院時期を自己判断で変更するものではありません。
治療上必要なスケジュールを優先したうえで、
「高額療養費は基本的に月単位」
と知っておくことが大切です。
医療費控除と高額療養費は併用できる
ここがこの記事で一番重要なところです。
医療費控除と高額療養費制度は併用できます。
ただし、高額療養費によって補填された金額を、そのまま医療費控除の対象にすることはできません。
考え方としては、
実際に支払った対象医療費- 高額療養費などで補填された金額- 医療費控除の基準となる金額
をもとに医療費控除額を計算します。
つまり、
高額療養費を利用したあとに残った自己負担額をもとに、医療費控除を考える
というイメージです。
高額療養費と医療費控除の両方から同じ医療費について二重に負担軽減を受ける仕組みではありません。
医療保険の給付金を受け取った場合はどうなる?
ここは、高額療養費以上に間違いやすいところです。
私自身、手術後に生命保険会社から、
入院給付金と手術給付金
を受け取りました。
こうした医療費を補填する目的の保険金や給付金も、医療費控除を計算するときには考慮する必要があります。
ただし、
「その年に受け取った保険金を、年間の医療費全体からすべて差し引く」
と単純に考えるのも正確ではありません。
保険金は「給付の対象になった医療費」から差し引く
ここが非常に重要です。
たとえば、
ある入院に対して医療費を20万円支払い、
その入院に対する給付金として29万円を受け取ったとします。
この場合、
29万円受け取ったから、年間の別の通院費から残り9万円も差し引く
という計算にはなりません。
保険金などで補填される金額は、その給付の対象となった医療費を限度として差し引きます。
補填額がその医療費を上回っても、余った金額を他の医療費から差し引く必要はありません。
これは医療費控除を計算するときに、かなり間違えやすいところです。
私自身、税理士事務所で顧問先の確定申告を担当していたとき、保険会社から給付金を受け取っていたことが後から分かり、税務署から確認を受けた経験があります。
医療費だけを集計して終わりではなく、
「その治療について、保険会社や健康保険から何か支給されていないか」
まで確認しておくことが大切です。
高額療養費・医療保険・見舞金の違い
ここまでを整理してみます。
| 受け取ったお金 | 医療費控除での基本的な考え方 |
|---|---|
| 高額療養費 | 医療費を補填するため差し引く |
| 入院給付金・手術給付金など | 給付対象となった医療費から差し引く |
| 健康保険などからの医療費補填 | 原則として差し引く |
| 会社や知人などからの一般的な見舞金 | 医療費を補填する保険金等とは扱いが異なる |
特に大事なのは、
「保険金を受け取ったか」だけではなく、「何のために支給されたお金なのか」
を見ることです。
私の場合、給付金を含めると医療費以上のお金が戻ってきた
私の場合、手術・入院などで自己負担した医療費がありましたが、民間の医療保険から約29万円の給付金を受け取りました。
結果だけを見ると、対象となった入院費などを上回る給付を受けたことになります。
しかし、
「給付金を多く受け取ったから、その余った金額を別の通院費から引かなければならない」
というわけではありません。
この点は、私自身の経験からも知っておいてほしいところです。
医療費控除は年間の医療費を集計する制度なので、一見すると、
年間医療費 − 年間に受け取った保険金
と考えたくなります。
でも実際には、どの医療費に対する補填なのかを対応させて考える必要があります。
医療費控除の申告前に確認しておきたいこと
確定申告の時期になってから慌てないためにも、医療費が多くなった年は次の資料をまとめておくと楽です。
① 医療費の記録
病院や薬局で支払った医療費を確認します。
医療費通知を利用できる場合は、医療費控除の明細書の記載を簡略化できる場合があります。
② 通院交通費
電車・バスなどを利用した場合は、日付・区間・金額・通院先などを記録しておきます。
③ 高額療養費として支給された金額
健康保険から補填された金額を確認します。
④ 民間保険から受け取った給付金
入院給付金や手術給付金などについて、
「どの治療・入院に対する給付なのか」
まで分かるようにしておきます。
⑤ 家族分の医療費
医療費控除は本人だけでなく、生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費も対象になり得ます。
これらを普段からまとめておけば、確定申告のときに一から探す必要がなくなります。
医療費控除の申告方法
医療費控除を受けるには、確定申告を行います。
基本的には、
1.1月1日〜12月31日に支払った対象医療費を確認する
↓
2.高額療養費や保険金など、医療費を補填する金額を確認する
↓
3.医療費控除の明細書を作成する
↓
4.確定申告を行う
という流れです。
国税庁の確定申告書等作成コーナーやe-Taxを利用して申告することもできます。
医療費通知を利用できる場合には、明細書の記載を簡略化できることもあります。
制度を知っているだけでも、病気になったときの不安は変わる
私自身、大きな手術を経験するまで、高額療養費制度を自分が利用するとは思っていませんでした。
医療費控除については仕事で知識がありましたが、自分自身が手術を受け、高額療養費を利用し、民間の医療保険から給付金を受け取る立場になって、制度のありがたさを改めて感じました。
病気になったときは、体のことだけで精一杯になります。
そこに、
「入院費はいくらになるのか」
「仕事を休んだら収入はどうなるのか」
「保険金はいくら出るのか」
「確定申告はどうすればいいのか」
と、お金の問題まで一気に押し寄せてきます。
だからこそ、元気なうちに制度の存在だけでも知っておくことには意味があると思います。
すべてを覚えておく必要はありません。
「大きな医療費がかかったときには、使える制度がある」
と知っているだけでも、実際に必要になったときの動き方は変わります。
まとめ|高額療養費を使っていても医療費控除は申請できる
最後に整理します。
高額療養費制度と医療費控除は、別の制度なので併用できます。
ただし、
- 高額療養費で補填された金額は医療費控除の計算で考慮する
- 民間保険の入院・手術給付金なども確認する
- 保険金は原則として給付対象となった医療費から差し引く
- 補填額がその医療費を上回っても、余った金額を別の医療費から差し引く必要はない
- 通院交通費にも対象になるもの・ならないものがある
- 医療費控除は「控除額がそのまま返ってくる制度」ではない
という点には注意が必要です。
医療費が高くなったときは、
「高額療養費を使ったから終わり」ではなく、その年の医療費全体を一度整理してみる。
それだけで、利用できる制度を見落としにくくなります。
私自身、大きな病気を経験して、
制度を知ることも、病気になったときの生活を守る一つの備えになる
と感じました。
高額療養費そのものを詳しく知りたい方へ
この記事では、医療費控除との違いや併用方法を中心に説明しました。
「実際に手術で100万円を超える医療費がかかったら、窓口ではいくら払うの?」
「月をまたいで入院したらどうなる?」
という方は、私自身の約3週間の入院経験をこちらにまとめています。
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