病気がなかったら、今の人生を選んでいなかった

病気は、人生を良くしてくれるものではありません。
できれば、誰だって経験したくない。

私自身も、病気になった瞬間に
「これまで積み上げてきたものが、全部崩れた」
そう感じました。

失ったものは、確かに多かった。
体力、働き方、安心感、将来の見通し。

それでも時間が経つにつれて、
一つだけ、どうしても無視できない感覚が残りました。

病気がなかったら、
今の人生は選んでいなかったかもしれない。

これは、前向きな結論ではありません。
むしろ、戸惑いと迷いの中で、
何度も行き戻りしながら辿り着いた実感です。

――失ったものより、選び直せたものの話

もし、病気がなかったら。
今もきっと、同じ人生を続けていたと思います。

同じ時間に起き、
同じように仕事へ向かい、
「忙しい」「仕方ない」という言葉で、
違和感に蓋をしていたはずです。

病気は、望んでなったものではありません。
できれば、なかった方がよかった。

それでも今、正直に言うなら――
病気がなかったら、今の人生は選んでいなかった。

これは病気を美化する話でも、
前向きさを押し付ける話でもありません。

壊れてしまった前提の上で、
人生をどう組み替え直したのか。
その過程と、今も続いている揺れを含めた記録です。

目次

病気になる前の「当たり前すぎた人生」

病気になる前の私は、
いわゆる「それなりに普通の人生」を歩いていました。

  • 仕事は忙しいが、評価はされている
  • 無理はしているが、致命的ではない
  • 不満はあるが、声に出すほどでもない

当時の私は、
人生を選んでいるつもりで、実は流れに乗っていただけ
だったと思います。

朝は時間に追われ、
夜は疲れ切って思考を止める。

「このままでいいのか?」
そんな問いが浮かんでも、
深く考える余裕はありませんでした。

忙しさは、
考えなくて済む理由になります。


病気が、人生の前提をすべて壊した

病気は、少しずつではなく、
ある日突然、前提を壊してきました。

  • 体力は戻らないかもしれない
  • 以前の働き方は続けられない
  • 明日の予定すら、確約できない

「元に戻る」という選択肢が、
静かに消えていく感覚。

この時期は、
前向きでも後ろ向きでもなく、
何も選べない時間でした。

選択肢がないのではなく、
選ぶ力そのものが、削がれていた。


何者でもなくなった「空白の時間」

病気をして、一番つらかったのは、
痛みや不安よりも、

「自分が何者なのかわからなくなったこと」
でした。

仕事の肩書きも、
役割も、
「これが自分だ」と言えるものが消えた。

焦りはありました。
ただ、動けない。

諦めにも似た感情と、
どこかで「戻りたい」という未練が混ざり合う。

この空白の時間は、
今振り返っても、簡単には言葉にできません。


病気が奪ったもの、残したもの

病気は、確実に多くのものを奪いました。

  • 体力
  • 集中力
  • 安定した収入
  • 将来の見通し

一方で、不思議なことに、
奪われなかったものもありました。

  • どこまでなら無理をしないか
  • 何を最優先にしたいか
  • 何を「やらなくていい」と切り捨てるか

病気は、
「できないこと」を増やしましたが、
同時に
人生の選択肢を整理する力
を残していったのだと思います。


人生を選び直すとき、理想論は役に立たなかった

人生を選び直す、という言葉は綺麗ですが、
現実はそんなに整っていませんでした。

  • 体調という制限
  • お金の不安
  • 家族への影響
  • 将来の見えなさ

「やりたいこと」よりも先に、
「続けられること」を考えなければならない。

これは、病気になる前の自分には
なかなか受け入れられない感覚でした。


今の人生は、あの頃は選べなかった

今の私は、

  • 体調を基準に働き方を決め
  • 無理な競争から距離を取り
  • 家族との時間を予定として確保し
  • 成長を、数字だけで測らない

そんな人生を選んでいます。

正直に言うと、
病気になる前の自分には、
この人生は「負け」に見えていたと思います。

でも今は違います。

これは、
自分で選び続けている人生
だと感じています。


それでも、残る未練と影

もちろん、
完全に吹っ切れたわけではありません。

たまに、
以前の人生を思い出します。

もし、病気がなかったら――
もっと稼げていたかもしれない。
もっと評価されていたかもしれない。

そんな考えが浮かぶこともあります。

でも、そのたびに思うのです。

あの人生を、今の体で続けられただろうか。


病気は「正解」を教えてくれなかった

誤解してほしくないのは、
これは「病気になってよかった」という話ではありません。

病気は、今でも不便です。
不安も、制限も、なくなりません。

ただ一つ確かなのは、
病気がなければ、
人生をここまで真剣に選び直すことはなかった。

それだけです。


まとめ|選ばされた人生ではなく、選び続ける人生へ

人生は、
良い出来事だけで形づくられるわけではありません。

ときには、
望まなかった出来事が、
選択の軸を浮かび上がらせることもある。

病気がなかったら、
今の人生を選んでいなかった。

でも今は、
この人生を、
自分で選び続けている。

それだけで、
十分だと思っています。

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この記事を書いた人

会計事務所、事業会社で税務・経理の仕事に従事していました。
40代で脊髄腫瘍になり、手術・リハビリをしつつ、現在はフリーランスで仕事をしています。