回復したら、働ける。
働けるなら、働く。
多くの人が、
無意識にそう考えていると思います。
でも、病気や手術を経験してみると、
その境界線は驚くほど曖昧でした。
無理をすれば、働けてしまう日がある。
けれど、その反動が、
いつ、どんな形で現れるかは分からない。
それでも「働ける」と言うのか。
それとも「働けない」と判断すべきなのか。
回復途中の人間にとって、
「いつから働いていいのか」という問いは、
とてもセンシティブで、簡単に答えの出ない問題です。
この記事では、
私自身の体験をもとに、
この問いを正解探しではなく、
判断の構造として整理していきます。
回復途中の人間は、いつ「働き始めていい」のか
「いつから働けますか?」
病気や手術を経験すると、
多くの人がこの問いに向き合うことになります。
でも、私はこの質問を、
医師にしたことがありません。
なぜなら当時の私は、
すでに無職だったからです。
医師に「いつから働けるか」を聞かなかった理由
手術前、私は会社員ではありませんでした。
退職後、リスキリングのために学校に通い、
卒業を目前にして病気が発覚し、
そのまま手術・入院・リハビリへと進みました。
つまり、
- 会社に戻る、という選択肢はない
- 「復職時期」を決める必要もない
- 就活をするか、自分で仕事を作るかの二択
そんな状況でした。
そのため
「いつから働けますか?」と医師に聞いても、
正直あまり意味がなかったのです。
医師の判断と、現実の体は別物だった
とはいえ、医師の話は覚えています。
「動けるのであれば、
日常生活に戻って、少しずつ慣らしていけばいい」
言い換えれば、
退院と同時に“働いてもいい”状態だったと思います。
ただ――
それと、現実はまったく別でした。
「働いていい」と「働ける」は、同じではない
退院直後の私は、
- 普通に歩くのがギリギリ
- 長時間立つ・座るのは厳しい
- 下肢の動きが悪く、疲労が強い
とてもではありませんが、
長時間労働など無理な状態でした。
手術後、強い痛みはありませんでした。
でも、体は言うことを聞かなかった。
「働いていい」と言われても、
「普通に働ける」状態ではなかったのです。
術後1年が経っても、8時間は働けない
手術から1年以上が経ちました。
今も、私は
8時間働くことができません。
やろうと思えば、
無理をすれば、できる日もあるかもしれない。
でも、
- 体にかかる負荷
- その後に出てくる疲れ
- 翌日、翌々日の体の痛み
を考えると、
現実的には 4時間が限界です。
一時期、
「もう少し大丈夫かもしれない」と思えた時期もありました。
でも時間が経つにつれて、
痛みの出方が変わってきている感覚もあります。
回復なのか、変化なのか。
正直、よく分かりません。
「良くなっているか?」と聞かれると、答えられない
よく聞かれます。
「良くなってきてますか?」
この質問も、とても答えづらい。
確かに、
できることは増えました。
でも、
- 痛みが消えたわけではない
- 働ける時間が戻ったわけでもない
「良くなっている」と言い切れるかというと、
決してそうではありません。
「働ける/働けない」は、時にとても残酷だ
私は、
この判断はとても残酷だと思っています。
なぜなら――
無理をすれば、1日くらいは働ける。
これを「働ける」と言うのであれば、
私は働ける人間です。
でも、
- その翌日、動けなくなる
- 痛みが強くなり、数日崩れる
それでも「働ける」と言えるのでしょうか。
翌日働けないなら、
それは「働けない」と考えるべきなのか。
どちらも、間違っていない。
だからこそ、残酷です。
個人の「頑張り」が、判断を曖昧にする
この問題は、
個人の頑張りに左右されすぎます。
多少の痛みを我慢して働けば、
外からは「働けている人」に見える。
でも本人は、
明らかに以前より不備を感じている。
私は、
この状態を「働くのが困難」だと考えています。
神経疼痛は、ほとんど評価されない
神経疼痛は、厄介です。
- 数値で測れない
- 画像で判断できない
- 他人と比較できない
部位や範囲によって、
痛みの質も、出方もまったく違う。
だから、
「神経が痛いから働けません」
と言っても、
ほとんど何の効力もありません。
制度上も、
社会的にも。
扱いとしては、
風邪で休んでいるのと、ほとんど同じです。
精神疾患と似ている部分があると感じる
私は精神疾患を経験していません。
でも、
とても似ている部分があると感じています。
- 本人にしか分からない
- 外から判断できない
- 説明しても伝わらない
同じ神経系統に支障をきたしている以上、
判断が難しいのは当然だと思います。
「傷が治っている=働ける」ではない
おそらく医師は言います。
「傷が回復していれば、働くことは可能です」
それは医学的には正しい。
でも、現実には――
痛みがあるから、働けない日がある。
私は、術後1年経った今も、
- 長時間のPC作業で
背中・胸・お尻に痛みが出る - 毎日同じようには動けない
だから、
8時間労働という前提自体が成り立ちません。
4時間しか働けず、痛い日は働けない現実
正直に言うと、
- 4時間しか働けない
- 痛い日は、働けない
この条件で雇ってくれる仕事は、
ほとんどありません。
あったとしても、
生活が成り立たない可能性が高い。
ここで、はっきり気づきました。
働き方を変えなければ、生きていけない
だから私は、
働き方を変えることに時間を使おうと決めました。
時間で働く働き方を、やめようと。
これは理想論ではありません。
体がそう要求してきた、
現実的な判断でした。
「いつ働いていいか」という問いへの、私なりの答え
回復途中の人間が
「いつ働いていいか」は、
体調だけで決まるものではありません。
- 無理をしなくても続くか
- 休む前提があるか
- 壊れたら、やめられるか
この構造が整ったとき、
初めて「働いていい」と言えるのだと思います。
私にとって、
それが「自分で仕事をする」という選択でした。
ここが、
私の働き方に関する考え方、
人生の大きなターニングポイントだったと、今は思っています。
