リハビリがつらいときに「心を立て直す」3つの方法|焦り・孤独・不安との向き合い方

リハビリがつらいと感じたとき、どう気持ちを立て直せばいいのか。筆者自身の脊髄腫瘍(硬膜内髄外腫)のリハビリ体験をもとに、焦り・孤独・不安を乗り越える3つの具体的な方法を紹介します。


目次

はじめに|「日常を取り戻す」までの長い道のり

硬膜内髄外腫の手術を受けてから、しばらく時間が経ちました。今も私はリハビリを続けながら、少しずつ「日常」を取り戻そうとしています。

手術を終えても、左足は完全には思うように動かず、階段を下りるたびに怖さを感じます。たった一段の階段が、こんなにも大きな壁になるなんて、手術前には想像もしませんでした。ゆっくり歩くのは問題ないのですが、少し早く下りようとすると足が自分の思うようについてこず、踏ん張りきれない瞬間があります。

そして、胸から背中にかけての痛み。これは朝起きた瞬間から夜眠るまで、ほとんど途切れることがありません。湿布やストレッチを試しても、なかなか思うように楽にはならず、「この痛みは一生続くのかな」と考えてしまうこともあります。

リハビリは、体を動かすだけのものではありません。焦りや不安、孤独と向き合う「心のリハビリ」でもあると、今は強く感じます。そんな日々の中で、私が少しずつ立ち直れたのは、ある3つの考え方に出会えたからです。それを、今日は具体的にお伝えします。


1.「昨日より少しだけ」を目標にする

比べないための“マイルール”を作る

リハビリを続けていると、他人や過去の自分と比べてしまうことがあります。私は手術前、マラソンやトレイルランニングを趣味にしており、走ることには自信がありました。今は、普通に歩くことや短い距離のジョギングはできますが、急に物が飛び出してきたり、自分の予測できない動きになると体が支えきれず、転倒しそうになることもあります。以前なら考えもしなかったことが、今はできない──この現実に、悔しさや怒りが湧く日もありました。

「普通に生活できていれば十分」「年齢を重ねればできないことも増えるよ」──周りは気遣って言ってくれます。でも、長年の趣味が思うようにできないのは、やはり辛い。そこで私は、比べないためのマイルールを作りました。

  • 目標は「昨日の自分より少しだけ前へ」
  • できたことは必ずメモ(距離・回数・痛みの強さなど)
  • 調子が悪い日は「横ばい=守り切れた日」と認定

統計と自分の身体を“分けて”受け止める

一般に、脊髄の術後は半年までが回復期(長くて1年)とされています。私もその期間は必死にリハビリに取り組みました。しかし術後1年を過ぎ、「統計的にはこれ以上の回復は難しい領域に入った」と認識したとき、大きなショックを受け、深く落ち込みました。

それでも、私の身体は「少しずつ良くなる兆し」を見せてくれている。統計は“全体の傾向”であって、“私の個別の経過”ではありません。そう切り分けて考えることで、心が軽くなりました。

小さな前進の積み重ねが自己効力感になる

私が意識したのは、「昨日より少しだけ」。1歩でも多く歩けたら、それで十分。前日より痛みが少し軽くなったら、それも大きな進歩です。たとえば、リハビリで「昨日より1周だけ多くジョギングする」と小さな目標を設定。達成できた日は、心の中で静かにガッツポーズ。翌日に痛みが戻っても、「昨日はあそこまでできた」という記録が自信になります。

リハビリの本当の勝負は、結果ではなく継続。昨日より少しでも前に進めたら、それで十分。あなたのペースで大丈夫です。焦らなくても、前に進んでいます。


2.「支えてくれる人」を思い出す

孤独感は“痛みの増幅装置”になる

リハビリの時間は、孤独を感じやすいものです。どれだけ家族が応援してくれても、「この痛みは自分にしか分からない」と思ってしまう。胸や背中の痛みが強く、朝起きた瞬間から気持ちが沈み、「今日はもう、何もしたくない」と感じる日もあります。今でも、何もしたくない・できない日があるのが現実です。

理学療法士という“伴走者”の存在

そんなとき救いになったのが、理学療法士さんの存在でした。私の状態を見ながらバランスを整え、動きを確認し、痛みが強い日は無理をさせない。そして何よりも「今日はどうですか?」「つらいですね」と声をかけてくれる。たったそれだけの会話でも、不思議と気持ちが軽くなります。

できるだけ同じ理学療法士さんにお願いしているのは、安心感があるから。体調の変化を理解してくれている人がそばにいる──その存在が、どれほど大きな支えになるか、身に沁みて感じました。

“人に頼る力”もスキルのひとつ

リハビリは決して一人ではできません。医療スタッフ、家族、友人、同じ経験をした仲間。支えてくれる人たちの存在を思い出すだけでも、心は少しずつ回復していきます。助けを求めることは弱さではなく、回復を前に進めるスキルです。

  • その日の痛み・不安を3行でメモして共有
  • 「やってほしいこと」を具体的に1つだけ依頼
  • 「今日はここまでできた」を一緒に喜ぶ

3.「今できること」に集中する

未来不安に“現在行動”でブレーキをかける

リハビリの過程では、「いつになったら元に戻れるのか」という不安が常につきまといます。未来ばかり見ていると、今の自分がどんどん苦しくなる。そこで私は、今できることに目を向けるようにしました。

  • 朝:ベッドの上で深呼吸を3回、足首をゆっくり10回回す
  • 日中:痛みが強い日は可動域の維持だけに切り替える
  • 夜:日記に「できたこと」を1行だけ書く(量より継続)

理学療法士さんから「今日はここまでできましたね」と言われると、どんな小さな動きでも自信に変わっていきます。未来を心配しすぎるより、今の一瞬に集中する。それができるようになると、リハビリが“戦い”から“日課”に変わっていきました。

“ふと気づく回復”を迎えるための地ならし

そしてある日、ふと気づくんです。「昨日より痛みが少ない」「階段を下りるのが怖くなくなった」──その瞬間が、心にも体にも訪れます。焦らず、比べず、淡々と。「今できること」に集中していれば、必ず変化は訪れます。


おわりに|“心のリハビリ”も少しずつでいい

リハビリは、体だけじゃなく、心にも負担がかかります。だからこそ、焦らず、比べず、頼りながらで大丈夫です。

「昨日より少しだけ」「支えてくれる人を思い出す」「今できることに集中する」──この3つを繰り返していくうちに、少しずつ心が回復していきます。回復には波があり、調子がいい日もあれば、痛みが強い日もあります。でも、どんな日もあなたがリハビリを続けているという事実が、すでに強さの証です。

私もまだ完治したわけではありません。痛みや不安を感じる日もあります。それでも、信頼できる人がそばにいて、支えてくれる環境がある。それだけで前を向けます。この記事が、今つらい時間を過ごしている誰かの不安を少しでも軽くできますように。そして、「自分のペースで大丈夫だよ」と、そっと背中を押せる存在になれたら嬉しいです。


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注記:本記事は個人の体験に基づくものであり、医学的助言ではありません。症状や治療方針については必ず主治医・理学療法士など専門家にご相談ください。

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この記事を書いた人

会計事務所、事業会社で税務・経理の仕事に従事していました。
40代で脊髄腫瘍になり、手術・リハビリをしつつ、現在はフリーランスで仕事をしています。