※本記事は筆者の体験に基づく一般的な情報提供です。
特定の読者の状況に対する税務・法的助言ではありません。
制度や税制は改正される場合がありますので、最新情報は税務署・年金事務所・各自治体、または専門家(税理士・社労士)へご確認ください。
前回の記事では、病気をきっかけに「働く意味」と「人生の優先順位」についてお話ししました。
今回は、その続きとして——
もし働けなくなったとき、どうやって生活を守るか。
私が実際に行った「3つの収入の仕組み」についてお話しします。
ある日突然、収入が止まった
脊髄腫瘍の手術をきっかけに、数か月間働けない時期がありました。
それまで毎月当たり前のように入っていた収入が、ある日を境にピタッと止まる。
頭では理解していても、現実にそれが起きると想像以上に堪えます。
「このまま収入がなかったら、どうすればいいんだろう?」
フリーランスには、有給休暇も傷病手当もありません。
体が動かなければ、その瞬間から“収入ゼロ”になる可能性があります。
働くことを当たり前としていた私は、
初めて「お金の流れが止まる」という恐怖を体験しました。
体調に合わせた“短時間労働”の現実
手術後しばらくは、長時間の作業ができませんでした。
後遺症の痛みで同じ姿勢を続けるのが辛く、集中力も続かない。
午前中だけ仕事をして、午後は横になる——そんな日々です。
痛みを我慢して無理に働くと、翌日は体が動かなくなる。
だから、「働かない勇気」も必要でした。
ただ、動ける範囲で何かできることはないかと考え、
在宅でできる仕事や、過去に培ったスキルを活かす方向へとシフトしていきました。
結果として、自分の裁量でできる働き方が、今の生活に最もフィットしました。
働けないときに支えになった“3つの仕組み”
ここから紹介するのは、私が病気前から意識して整えていた
「働けなくても収入が入る3つの仕組み」です。
一気に作ることは難しいですが、元気なうちに少しずつ準備しておくことで、
“いざという時の安心”をつくることができます。
① 株の配当金(インカムゲイン)
最初に支えになったのは、株の配当金でした。
働けない期間中も、一定の時期になると自動的に振り込まれるお金。
まさに“時間を味方につけた仕組み”です。
もちろん、投資にはリスクがあります。
でも、長期保有で安定した企業を選べば、
「働かなくても入る収入」を作ることができます。
以前は値上がり益を狙った投資もしていましたが、
働けなくなったことをきっかけに、配当中心の運用スタイルへとシフトしました。
配当利回り4%以上を目安に、決算内容や将来性を見ながら少しずつ買い増し。
価格変動に一喜一憂せず、長期保有での安定を目的にしています。
結果的に、療養期間中の生活を支える“ベーシックインカム”のような存在になりました。
たとえわずかでも、「お金が増えている」という感覚は、精神的な支えになります。
📌 ポイント
- 短期売買ではなく長期保有
- 配当が安定している企業を選ぶ
- NISAを活用すれば非課税で受け取れる
「働かない時間にお金が働く」——
この仕組みを持つことは、フリーランスにとって大きな安心です。
② 在宅でできる業務委託・副業
次に支えになったのが、在宅でできる業務委託です。
私は会計事務所や企業経理での経験があったため、
昔の同僚から声をかけてもらい、在宅で決算補助や経理処理を請け負うようになりました。
「体調の良い日に、無理なくできる範囲で仕事をする」
このリズムが、復職の第一歩になりました。
もし専門職でなくても、クラウドソーシングなどで探せば、
次のような在宅ワークは数多くあります。
- データ入力や経理補助
- ライティングやリライト
- アンケートやレビュー投稿
- スキル販売(Canva、Notion、Excelなど)
最初は小さな仕事でも構いません。
“社会とつながり続けること”が最大の財産になります。
💡 在宅ワークのポイント
- 長時間労働を避ける
- 体調の波に合わせて調整する
- 単発案件より、継続契約を意識する
働けなくなった時期でも、“社会との接点”を持ち続けたことが、
私の回復を大きく後押ししてくれました。
③ 公的制度を知り、活用する
3つ目は、公的制度の活用です。
日本には、病気やけがなどで収入が減った人を支える制度がたくさんあります。
ただし——
「知っている人だけが使える」のが現実です。
そして、申請しなければ受けられません。
私が実際に利用した制度は以下の通りです。
- 高額療養費制度:医療費の自己負担が一定額を超えると払い戻し
- 国民健康保険の減免制度:収入が下がった場合に保険料を軽減
- 国民年金の免除・猶予制度:納付が難しい場合に申請可能
私は利用していませんが、他にも次のような制度があります。
- 障害基礎・厚生年金:障害により生活や就労が制限される場合に申請可
- 障害者手帳:日常生活で支援を必要とする場合に発行
特にフリーランス、個人事業主、無職の場合は、
会社員と違って自分で申請しないと、誰も代わりに手続きをしてくれません。
でも、一度知っておけば、
「どんなときに、どんな支援が受けられるか」が見えてきます。
制度は“弱者のため”ではなく、“誰もが使える仕組み”。
必要なときは遠慮せず申請し、元気になったら社会に返す。
それが本来の循環だと感じます。
「収入の柱」を複数持つという考え方
病気を経験して痛感したのは、
「収入が一つしかないと脆い」という現実です。
ひとつの仕事、ひとつの取引先、ひとつの所得区分。
どれかが止まった瞬間に、生活も止まってしまう。
でも、収入源を3本持っていれば、
1本が折れても残りの2本で支えられます。
- 働いて得るお金(業務委託・在宅ワーク)
- 働かなくても入るお金(配当・資産収入)
- 制度で守られるお金(公的サポート)
この3つの柱を意識するだけで、
生き方の“安心度”が大きく変わります。
所得区分を分けておくと強い
税金面でも、所得の種類を分けておくことはリスク分散になります。
給与所得、事業所得、配当所得(申告不要の場合)、譲渡所得、不動産所得など、
複数の所得区分を持つことで、それぞれの控除や優遇措置を活かせる場合があります。
たとえば、NISAの非課税制度を利用した配当金は、
所得税もかからず、原則として国民健康保険料の算定基準にも含まれません。
クラウドソーシングなどでライティングなどの仕事を請け負う場合、
家賃・光熱費・通信費など、事業に関連した部分を経費として計上できる場合があります。
ただし、経費にできる割合(按分)は、使用面積や使用時間など、
合理的な根拠をもとに計算する必要があります。
※(按分比率の根拠となる資料は保存しておくと安心です)
また、青色申告の要件を満たすことで、最大65万円の特別控除を受けられる場合もあります。
どの所得区分に当たるか、経費の按分がどこまで認められるかは、
契約形態や仕事の内容によって異なります。
そのため、具体的な判断は税務署や税理士に確認するのが確実です。
【参考例】
A社の仕事 給与所得(バイト・パートで雇用契約あり)
B社の仕事 事業所得(業務の請負・雇用契約なし)
C社の配当 配当所得(申告分離課税で源泉徴収されているため、原則申告不要)
※NISAの場合は、配当に税金がかかりません。
不動産収入 不動産所得
※私は不動産所得はありませんが、例として挙げています。
※ここでは詳細までは記載しませんが、所得を分散することで、各所得区分に応じた控除や経費計上が認められる場合があります。
その結果、税金や社会保険料の負担を抑え、実質的な手取りを増やせる可能性もあります。
ただし、実際の扱いは契約内容や所得状況によって異なるため、
最終的な判断は税務署や税理士へ確認することをおすすめします。
所得を分けることは、「守りの設計」にもなる
このように、所得を分散しておくことで、
1つの収入が途絶えても、他の所得で生活を支えることができます。
複数の柱を持っておくことは、
「リスク分散」+「節税効果」+「安心の生活基盤」を同時に備える考え方です。
また、病気やけがで一時的に働けなくなっても、
他の所得が家計を支えてくれることで、生活の安定を保ちやすくなります。
つまり、所得を分けるというのは“税金対策”というより、
「人生のリスクヘッジ」なのだと思います。
💡 まとめ
- 所得を複数持つことで、税金・社会保険料・生活リスクを分散できる
- 経費や控除の扱いは契約内容や所得区分で異なる
- 判断が難しい場合は、税務署・税理士に確認するのが確実
- 所得分散は「節税」よりも「安心の仕組みづくり」として考える
自分に合った“仕組みづくり”を
ここで紹介した方法は、あくまで私の実体験に基づくものです。
人によって向き・不向きがありますが、
大切なのは「自分に合う仕組み」を持つこと。
- 1株だけでも投資を始めてみる
- クラウドソーシングに登録してみる
- 自治体の支援制度を調べてみる
- 仕事仲間に声をかけてみる
そんな小さな一歩が、
“将来への不安”を“安心の仕組み”に変える第一歩になります。
まとめ:安心の“種”は、元気なうちにまいておこう
病気をして痛感したのは、
「備えは、元気なうちにしかできない」ということでした。
働けない期間に支えてくれたのは、
「お金」そのものではなく、
“お金を生み出す仕組みを持っていたこと”です。
安心は、偶然ではなく準備から生まれます。
だからこそ、働ける今のうちに、
少しずつでも仕組みを作っておくことが、
未来の自分を守る最大の防御力になると思います。
