フリーランスが働けなくなった時に備える就業不能保険|仕組み・メリット・注意点まとめ

フリーランスにとって、最大のリスクは「病気やケガで働けなくなること」。
会社員なら健康保険から「傷病手当金」が支給され、最長1年半は生活費の一部が補償されます。
しかし、個人事業主やフリーランスにはこの制度がありません。

私自身、脊髄腫瘍の手術と長い療養を経験し、「もし働けなくなったら、どうやって生活を守れるのか?」という不安に直面しました。
そのときに知ったのが、民間の「就業不能保険(働けなくなった時の収入補償)」という仕組みです。

本記事では、就業不能保険の基本から、メリット・デメリット、加入時の注意点までをわかりやすく解説します。
「病気になったら収入ゼロ…」という不安を減らしたい方は、ぜひ参考にしてください。

目次

就業不能保険とは?フリーランスの“傷病手当金”の代わり

まず、会社員とフリーランスでは大きな違いがあります。

働けなくなったときの補償会社員フリーランス
公的制度健康保険の「傷病手当金」あり
(給与の約2/3を最長1年半)
なし(収入はゼロ)
民間の補償手段任意加入(必要に応じて)就業不能保険が頼みの綱

つまり、フリーランスの場合、働けなくなった瞬間に収入が途絶えるという現実があります。
就業不能保険は、その“穴”を埋めるために作られた民間の収入補償制度です。

保険会社が定める条件を満たせば、働けない期間中に毎月10〜30万円程度の給付金を受け取ることができます。


「就業不能」とは?──保険会社によって基準が違う

注意したいのは、「働けない状態」の定義が保険会社によって異なることです。

  • A社の例:「現在の仕事ができない状態」で給付対象
  • B社の例:「どんな仕事もできない状態」でなければ対象外

この違いは非常に大きく、後者の場合は給付を受けるハードルが高くなります。
たとえば、経理フリーランスの方が「長時間座る作業が難しい」場合でも、「軽作業ならできる」と判断されると給付されない可能性があります。

加入前に、「どんな状態で給付されるのか」を必ず確認しましょう。


就業不能保険の基本的な仕組み

① 毎月いくら給付されるか

保障額は 月10万円〜30万円前後 が一般的。
「生活費+固定費(家賃・通信費など)」をカバーできる金額を目安に設定します。
高く設定するほど安心ですが、その分保険料も上がります。


② 給付が始まるまでの“待機期間”

就業不能と認定されても、すぐに給付が始まるわけではありません。
多くの保険では 60日〜180日 の「待機期間」があります。
この間は、病気やケガで働けなくても給付されません。

待機期間を長くすると保険料を抑えられますが、貯金がない方には負担になります。
目安として、生活防衛資金として3〜6か月分の生活費を確保しておくのが理想です。

ちなみに、会社員の「傷病手当金」の待機期間はわずか3日。
制度としてみれば、民間保険より公的保障の方が手厚いことがわかります。


③ 給付される期間

給付期間は「1年」「2年」「5年」「65歳まで」などから選択できます。
長期にするほど保険料は上がりますが、慢性疾患や長期療養に備えるなら2年以上が安心です。


メリットとデメリットを整理

🟦メリット

  • 傷病手当金がないフリーランスでも収入を補える
  • 長期療養中の生活費を確保できる
  • 貯金だけに頼らずに安心できる

🟥 デメリット

  • 精神疾患(うつ病など)は対象外のケースが多い
  • 保険料が高め(月数千円〜1万円以上)
  • 「就業不能」の定義が厳しく、給付条件を満たさない場合がある

ただし、最近はうつ病などのメンタル疾患にも対応する保険も登場しています。
心身の両面でリスクを感じる方は、対象範囲を必ず確認しておきましょう。


加入を検討する際のポイント

1. 保障額は「最低限の生活費」を基準に

毎月の生活費を洗い出し、「これだけは必要」という金額を補えるように設定します。
多くの方は、月20〜25万円前後を目安にしています。


2. 待機期間で保険料を調整する

もし貯蓄があるなら、待機期間を長め(例:180日)に設定して保険料を抑えるのも手。
反対に貯金が少ない場合は、短い待機期間(例:60日)にして早めに給付を受けられる設計にしましょう。


3. 告知内容・過去の病歴は正確に

過去の病気や通院歴によっては、加入を断られたり条件付きになることもあります。
虚偽の申告をすると、いざという時に給付が受けられないため、正直に伝えることが大切です。


私の体験から感じた“備えの必要性”

私は脊髄腫瘍の手術後、長い療養生活を送りました。
何もできず、ベッドで過ごす時間が増えるたびに「収入が止まったら、この先どうなるのか」という不安が頭をよぎりました。

もし会社員のままだったら、傷病手当金に守られていたでしょう。
けれどフリーランスには、それがありません。

その現実を突きつけられたとき、「自分の安全網は自分でつくるしかない」と強く感じました。
調べていく中で出会ったのが、就業不能保険という選択肢。
「すぐに加入できなくても、こういう制度がある」と知っておくだけでも、心の安心が全く違います。


まとめ|“働けなくなるリスク”を他人事にしない

  • フリーランスには傷病手当金がなく、収入ゼロのリスクがある
  • 就業不能保険はその穴を埋める数少ない制度
  • ただし、対象範囲や条件には注意が必要
  • 保険だけに頼らず、貯金・副収入・公的制度と組み合わせるのが理想

病気やケガは、誰にでも突然訪れます。
「自分には関係ない」と思っているうちは、対策は後回しになりがちです。

私の経験から言えるのは、“元気なうちに備えること”こそが最大の防御だということ。
フリーランスという自由な働き方を続けるためにも、今のうちに自分なりのセーフティーネットを整えておきましょう。

🔗 関連記事

※✉個人的なご相談や非公開のご質問は、お問い合わせフォームからどうぞ。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

会計事務所、事業会社で税務・経理の仕事に従事していました。
40代で脊髄腫瘍になり、手術・リハビリをしつつ、現在はフリーランスで仕事をしています。