病気で人生が止まった日。そこから“生き直す力”をくれた時間の話

「まさか、自分が病気になるなんて。」
——あの日、医師の口から聞いた診断名が頭の中を何度も巡りました。

「脊髄腫瘍です。専門の先生に確認するのがいいですが、おそらく硬膜内髄外腫でしょう。」
聞き慣れない言葉に、頭が真っ白になりました。

それまで当たり前のように続いていた仕事、家族との生活、未来への計画。
それらが一瞬で“停止”する感覚。

人生が止まった、とはまさにこのことでした。

ただ一方で——
病名と原因が分かったことで、少しだけ安心した自分もいました。
「原因が分かった」ことが、治療へのスタートラインだったからです。


目次

時間の流れが変わった瞬間

入院生活が始まると、時間の感覚がゆっくりと変わっていきました。
電子音だけが響く夜。
カーテンの隙間から差し込む朝の光。
時折、病室の外から聞こえる奇声。

それまで「時間が足りない」と言い続けていた自分が、
今度は「時間を持て余す」側にまわったのです。

仕事をしていた頃は、
メール対応、会議、日常業務——とにかく時間を惜しみながら動き、
「効率よく、早く帰ること」ばかりを考えていました。

けれど病室では、
何もできない時間の中で、
「自分と向き合うこと」しかできませんでした。

その静かな時間の中で、ようやく気づいたのです。

「生きる」って、働くことだけじゃない。
「時間を使う」とは、自分を大切に扱うことでもある——。

リハビリを通して体の感覚を取り戻しながら、
心のリハビリも少しずつ始まりました。

焦る気持ちを抑え、
一歩でも前に進めた日を数えるように。


働き方を見直すきっかけに

退院しても、以前のようには働けませんでした。
集中力も体力も限界があり、朝から晩まで働く「元の生活」に戻ることはできません。

それでも——
“もう一度、社会とつながりたい”という想いだけは、
消えることがありませんでした。

そんな中で出会ったのが、フリーランスという働き方でした。

在宅で経理の仕事をしながら、
ブログやnoteの運用を始め、
自分のペースで働く。

「誰かに雇われる」ではなく、
「自分で選ぶ」という感覚が、少しずつ自信を取り戻させてくれました。

健康だった頃は、何も考えずに働けました。
けれど今は、体調を考えながら働く。
その考え方に、もう迷いはありません。

会社員に戻る選択肢は、自分の中でなくなりました。

もちろん、不安がなかったわけではありません。
「フリーランスでやっていけるか」ではなく、
「フリーランスで生きていくしかない」という覚悟。
相当なプレッシャーを感じながらの再出発でした。

それでも、不思議と今はこの状況を楽しんでいます。

周囲の人から「いきいきしてるね」と言われることが増えました。
——それが何よりの励みになっています。

▶️ 病気をきっかけに見直した「働き方の優先順位」

人生には、自分の思い通りに進める人もいれば、そうでない人もいます。
私は後者ですが、決して悲観的には捉えていません。

なぜなら、人生の折り返し地点が見えた今だからこそ、
“もう一度挑戦できる”と思えるからです。

若い人に比べれば、体力も知識も劣るかもしれない。
でも——経験という大きな武器があります。

私は、私にしかできないことで戦っていく。
だからこそ今は、“会社員だから安定”ではなく、
“体と向き合いながら楽しめる働き方”を選びました。


お金との付き合い方も変わった

働けなくなったとき、
「収入が止まる怖さ」を身をもって知りました。

健康な頃は「貯金があれば何とかなる」と思っていましたが、
現実はそんなに甘くありません。

思った以上に医療費はかかります。
手術や入院では高額療養費制度が使えるとはいえ、
退院後も、リハビリ・薬代・湿布などで出費が続きます。

本来なら、以前よりも働く必要があるのに、
時間があっても体が動かない。
収入が減っても、生活は待ってくれません。

そこから私は、制度・配当・在宅収入という3つの柱で
お金の備えを再構築しました。

「自分が動かなくても収入を得られる仕組み」を作るために。

▶️ もし明日働けなくなったら?3つの収入の仕組み

「貯める」よりも、「守る」お金の使い方へ。
そして、将来への不安を“見える形”に変える工夫を始めました。

それは、心を守ることにもつながりました。


病気とともに生きるという選択

手術で腫瘍は取り除かれましたが、
神経痛・麻痺・痺れ・体の機能不全などの後遺症は今も残っています。

完治という言葉を追いかけるよりも、
“共存”という生き方を選びました。

調子の良い日もあれば、痛みで何もできない日もあります。
でも、それでいいんです。

以前の私は、がむしゃらに前だけを見ていました。
今の私は、立ち止まりながらでも、自分のペースで歩けています。

痛みで動けないときは、
「今日は体のメンテナンス日」と決めて、
無理をしないようにしています。

我慢を美徳にしない。
疲れたら休む。

それは怠けではなく、
これから長く生きていくための必要な習慣です。

病気がくれた「時間の贈り物」——
それは、立ち止まる勇気でした。


同じ境遇のあなたへ

焦らなくていい。
以前の自分や周りと比べなくていい。

「できるようになったこと」を数えながら、
少しずつ歩いていけば、それで十分です。

“できなくなったこと”ではなく、
“できるようになったこと”を見つける。

その積み重ねは、目に見えないほど小さくても、
確実に前へ進む力になります。

そして、あなたがその歩みを続ける姿は、
きっと誰かの希望になります。


生き直す力をくれた「時間」

病気をきっかけに、
働き方・お金・生き方のすべてを見直しました。

立ち止まった時間が、
もう一度、自分らしく生きる力をくれたのです。

これまでの記事では、
病気と仕事、そしてお金の備えについて書いてきました。

次のステップでは、そこから見えてきた
「生き直すための考え方」を、
少しずつ形にしていく予定です。

すぐに答えを出さなくてもいい。
立ち止まった時間こそ、人生を再設計するチャンスだから。

これからも、その過程を一歩ずつ記していきます。

この記事が、どこかで誰かの勇気につながれば、
それ以上にうれしいことはありません。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


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この記事を書いた人

会計事務所、事業会社で税務・経理の仕事に従事していました。
40代で脊髄腫瘍になり、手術・リハビリをしつつ、現在はフリーランスで仕事をしています。