「元気そうに見えるね」の一言が刺さるとき|見えない病気と生きる日々

「元気そうに見えるね」――。
病気を経験してから、その言葉が素直に受け取れない日があります。

今回は、見た目では分からないつらさを抱える人の気持ちを、私の経験をもとに綴ります。
同じように悩んでいる方の心が、少しでも軽くなれば嬉しいです。

目次

「元気そうに見えるね」の一言が刺さるとき

病気をしてから、よく言われる言葉があります。
それは――
「元気そうに見えるね」という一言。

もちろん、相手に悪意がないことは分かっています。
むしろ「安心した」「頑張ってるね」という気持ちがこもっているのも伝わります。

けれど、その一言が心の奥にズシンと響く日があるのです。

今日は、そんな「見た目では分からない病気のつらさ」について、私自身の経験を交えながらお話ししたいと思います。


見た目が元気でも、内側では戦っている

病気やケガを経験しても、外から見ただけでは分からないことが多くあります。
特に神経や慢性痛に関する病気は、外見に変化が少ないため、周囲から理解されにくいのが現実です。

私も、脊髄腫瘍の手術を受けてから、神経痛、しびれ、麻痺、倦怠感といった後遺症とともに生活しています。
それでも人と会うときは、なるべく笑顔で、普段どおりに接しています。

すると周囲からはこう声をかけられます。

「もう大丈夫そうだね!」
「元気そうで安心したよ」

心配してくれる気持ちは本当にありがたい。
でも、その言葉を受けた瞬間――
「本当の自分の状態は、誰にも分かってもらえない」という孤独を感じてしまうことがあるのです。


見えない症状の代表例

病気というと、顔色が悪くなったり、痩せたりするなど、目に見える変化を想像する人が多いかもしれません。
しかし実際には、外から分からない症状のほうがずっと多いのです。

  • 慢性的な神経痛やしびれ
  • 強い倦怠感・体の重だるさ
  • 集中力・思考力の低下
  • 睡眠障害や気分の落ち込み
  • 薬の副作用による吐き気や頭痛
  • 精神疾患

こうした“見えない症状”は、怠けているように見られたり、もう治ったのでは?と誤解されがちです。
ですが、神経や脊髄などの損傷は完全には回復しない場合も多い

痛みがあるのに、見た目が普通というだけで「元気そう」と判断される――。
このギャップが、何よりもつらい部分なんです。


「普通に見える」ことが、時に残酷になる

私たちはつい、「普通に見える=健康」と考えがちです。
けれど、実際には“普通に見える努力”をしているだけということも多い。

私も外出の時には体調を整え、薬を飲み、湿布、塗り薬で痛みをやわらげています。
しかし家に帰ればぐったりして動けない日もあります。

そんな現実を知らない人から、

「普通に働けるんじゃないの?」
「休みすぎじゃないの?」
といった言葉を受けることもありました。

心ない一言が、どれほどの重さで心に刺さるか――
病気を経験して初めて気づくことがたくさんあります。


医療の現場でも“見えない苦しみ”は軽視されがち

実は、こうした見えない症状は医療の現場でも誤解されやすいです。
検査数値や画像に異常がないと、「もう治っている」と判断されることも少なくありません。

しかし神経の損傷や慢性痛は、数値では表せない領域。
症状が残っていることを理解してもらえないと、
「自分の感覚がおかしいのかもしれない」と、患者自身が自分を責めてしまうこともあります。


病気をして変わった「見えない苦しみ」への視点

私は経理やフリーランスの仕事をしているため、
一見すると「デスクワーク中心で楽そう」と思われがちです。

でも、長時間座ること自体がつらい日もあります。
痛みで集中できず、休憩を取らないと何もできない時間がある。

以前の自分なら「気合いが足りない」と言っていたかもしれません。
しかし今は、「見えない苦しみこそ、最も理解が必要なものだ」と痛感しています。


本当に欲しいのは「理解」よりも「気づき」

では、なぜ「元気そうに見えるね」と言われると傷つくのでしょうか。
それは、完璧な理解ではなく“気づき”を求めているからです。

「無理しなくていいよ」
「まだ体調が戻ってないんだね、大丈夫?」

そんな一言があるだけで、心が救われる瞬間があります。
理解してほしい、説明しなきゃ――と力む必要はありません。

大切なのは、“気づいてくれている”という安心感なんです。


「分かってほしい」より「分かち合いたい」

病気をして学んだのは、理解してもらうことの難しさです。
でも、分かち合うことはできる。

同じように慢性疾患や見えない障害を抱える人と話したとき、
「わかる!」「私も同じ」と笑い合えた瞬間――
あの温かさは、どんな治療よりも心を癒してくれました。

人に分かってもらえなくても、共感してくれる人は必ずどこかにいる。
それを知っているだけで、孤独の重さは少し軽くなります。


同じように悩むあなたへ

もしこの記事を読んでいるあなたが、
「元気そうに見える」と言われて苦しくなった経験があるなら――

その気持ちは、決して特別でも弱さでもありません。
あなたが感じている痛みは、確かに存在しています。

見た目に出ないだけで、日々戦っている人はたくさんいます。
だから、無理に「分かってもらおう」と頑張らなくてもいいんです。

あなたの体を、一番理解しているのはあなた自身。
そして、ここにも同じように戦っている人間がいるということを、思い出してほしいです。


まとめ:見えない痛みを抱えるすべての人へ

病気をしてから、何度もかけられた「元気そうだね」の一言。
それは時に嬉しく、時に苦しい言葉でした。

見た目では分からない痛みや不安を抱えながらも、
それでも前を向こうとする人がいる。

そんな現実を、この記事を通して少しでも伝えられたらと思います。

見えない痛みを抱えるすべての人へ――
どうか今日も、自分のペースで生きてください。


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この記事を書いた人

会計事務所、事業会社で税務・経理の仕事に従事していました。
40代で脊髄腫瘍になり、手術・リハビリをしつつ、現在はフリーランスで仕事をしています。