「ただの肩こりだと思っていた」——あの頃の自分に、そう言いたくなる。
最初は、咳をしたときに背中が少し痛む程度だった。
仕事の疲れ、姿勢のせい、年齢のせい。どれも違っていた。
気づいたときには、胸椎の中に“2センチの腫瘍”があった。
これは、私が脊髄腫瘍と診断されるまでの半年間を、ありのままに記した記録です。
誰もが「まさか自分が」と思う。
だからこそ伝えたい。
――あのときの“違和感”は、きっとあなたの体のサインかもしれません。
脊髄腫瘍が見つかるまで
──あのときの「違和感」を見逃さなければ
あのときの違和感は、ただの疲れだと思っていました。
最初に異変を感じたのは、手術の約半年前。肩甲骨のあたりに、ズキッと響くような痛みが出たのです。
咳をしたときに背中の奥が痛む——それが最初のサインでした。
当時の私は事務職で、一日中パソコンの前に座っていました。
だから「肩こりがひどいだけだろう」と軽く考えていたんです。
湿布を貼り、ストレッチをし、マッサージに行き、それで終わり。
病院に行くほどのことではないと思っていました。
痛みが続く日々——それでも「疲れ」と思い込んでいた
それから2カ月ほど経った頃、肩甲骨の痛みは慢性化しました。
マッサージや整体にも通いましたが、一向に良くなりません。
パソコン作業での姿勢が悪いのかと思い、ストレッチ方法や枕を変えてみたりもしました。
けれど、どれも効果はありませんでした。
整形外科に行ってレントゲンを撮ってもらうと、
「ストレートネックによる肩こり」と診断。
電気治療や湿布など、1カ月半ほど通いましたが、痛みは変わらず。
知人の紹介で“有名な整体師”にもかかりましたが、結果は同じでした。
今になって思えば、この頃から歩き方が少しぎこちなかった気がします。
足首の動きが鈍く、片足に軽く力を入れると違和感があった。
腹部の筋力も落ち、左足の腸腰筋の動きが鈍いと指摘されました。
でも当時は、まさか背中の奥に腫瘍があるなんて、夢にも思っていませんでした。
鍼灸の先生の一言が、人生を変えた
整体でも治らず、最終的に鍼灸に通うことにしました。
数回通ううちに、少し楽になったような気がしました。
ところが、ある日先生が言いました。
「あなたの体は、少し普通じゃない。念のため、大きな病院で検査を受けてみたほうがいいよ。」と
その一言が、後の私の人生を大きく変えることになりました。
以前通っていた整形外科で紹介状を書いてもらい、
大きな病院でMRI検査を受けました。
MRIの結果——画面に映った“白い影”
MRIを撮り終え、診察室に呼ばれました。
先生のパソコン画面を見た瞬間、素人の私にも分かりました。
胸椎に、白く浮かび上がった“何か”がある。
先生は静かに言いました。
「胸椎に2センチほどの腫瘍があります。おそらく良性の神経鞘腫。硬膜内髄外腫だと思われます。」
私は先生に言われる前から「手術が必要だ」とすぐに悟りました。
すると先生は続けました。
「このまま大きくなると、胸から下が動かなくなる可能性があります。」
その言葉を聞いたとき、血の気が引きました。
歩くことも、仕事をすることも、日常が全部奪われるかもしれない。
それでも、不思議と冷静に「早く手術をしよう」と思ったのを覚えています。
「よく歩けてますね」と言われた違和感
診察の最後に先生はこう言いました。
「よくバランスを取って歩けてますね。普通ならもう歩くのが難しいはずですよ。」
当時の私は、まだ片足立ちもできました。
それが良いことなのか悪いことなのか分かりませんが、
痛みがあること以外、異常を感じることなく普通に過ごせたのです。
それで発見が遅れてしまったことを、今でも少し後悔しています。
MRIで腫瘍が見つかってから、手術までは約1カ月半。
病気について他の人のブログを調べましたが、
臨床情報が多く、経験者の情報が少なく不安な毎日を
過ごしていました。
ただ現実を受け止めるので精一杯でした。
痛みのピーク——“咳をするのも怖い”
手術が決まってからの数週間は、地獄のようでした。
ロキソニンでは痛みが抑えきれず、より強い鎮痛薬を処方されました。
それでも、薬を飲んでもうずくまるほどの痛みが走る日がありました。
咳をしたり、自転車に乗ってるだけでも激痛が走る。
夜、寝返りを打つたびに背中に突き刺さるような痛み。
「もう風邪をひくわけにはいかない」と、本気で思っていました。
もし咳が出たら、そのたびに地獄を見る——そんな状態でした。
排尿・排便障害という“もうひとつのサイン”
痛みだけではありません。
手術直前になると、脊髄の圧迫によって、
排尿・排便にも影響が出てきました。
トイレで尿意を感じても、なかなか出ない。
5分、10分と便座に座って「出るイメージ」をしないと出せない。
混んだ駅のトイレなどは到底使えませんでした。
座って排尿することも増え、排便も同じように力が入らない。
薬を飲んでも出ない日もあり、ただ「無理せず、出るまで待つ」しかありませんでした。
「もう限界だ」と思ったときに
そんな状態の中、私はようやく自分の体の“異常さ”を受け入れました。
痛み、しびれ、麻痺——それらはどれも、「疲れ」や「姿勢のせい」ではなかった。
神経が悲鳴を上げていたのです。
それでも、あの鍼灸院の先生が気づいてくれなければ、
今こうして歩いていられたか分かりません。
あの一言が、私の命を救ったのだと思っています。
同じような痛みを抱えている人へ
私が伝えたいのは、「おかしい」と感じたら、迷わず検査してほしいということです。
レントゲンで異常がなくても、MRIでしか見えない病気があるという事実。
私も、整形外科でストレートネックと診断されてから、半年も遠回りしました。
あのとき、もう少し早く検査していれば——
そう思うこともあります。
でも今は、こうして経験を伝えられることに意味があると思っています。
まとめ
脊髄腫瘍は、最初から強い痛みが出るとは限りません。
私のように「肩こり」「姿勢の悪さ」と思い込んでしまうケースも多い。
でも、少しでも「いつもと違う」と感じたら、迷わずMRI検査を受けてください。
早期発見こそが、回復への最短ルートです。
あのときの自分に伝えたい言葉を、今はこうして書くことで、
同じ痛みを抱える誰かに届けたいと思っています。
