退院後の生活が、想像以上にしんどかった話

~脊髄腫瘍手術後の「現実」と向き合うまで~

私は脊髄腫瘍の手術を受け、退院後の生活を今も続けています。
退院したときの私は、どこかで「これで元の生活に戻れる」と思っていました。

でも現実は、まったく違いました。

病院で“ひとりで生活できる状態”になったとしても、
“元どおりの生活に戻れる”という意味ではありません。

むしろ退院してからのほうが、想像以上にしんどかったんです。

ここでは、私が実際に体験した「退院後のリアル」を書きます。
今まさに同じ状況にいる人がいたら、少しでも心が軽くなればうれしいです。

目次

病院を出た瞬間に始まる、“別の試練”

病院は「自力でできること」がある程度そろえば退院になります。
つまり、“少しできない程度”では入院は継続されません。

だからこそ、家に帰った瞬間、現実にぶつかりました。


階段がこんなに怖いなんて思わなかった

家の階段を下りるとき、初めて自分の身体に「戻っていない部分」があることを痛感しました。

手すりなんて、今まで必要ありませんでした。

でも退院後は、
手すりを持たないと、そのまま転落しそうになる。

一段一段、ゆっくり。
慎重に。
怖くないように深呼吸をしながら。

駅の階段も同じです。
それまで“駆け上がる・駆け下りる”こともできていたのに、
今は段差に身体がついてこない。

周囲のスピードについていけず、
自分だけが取り残されていく感覚。

その違和感と悔しさは、言葉にできないものでした。


歩くスピードは、世界から遅れていた

街を歩いていても、以前のようにスタスタ歩けるわけではありません。

私は昔、人よりも早く歩くタイプでした。
でも退院後は、周りの歩くスピードのほうが速く感じる。

実際にいまも、
必死でくらいついて、やっと同じスピードで歩ける状態です。

あたり前が、あたり前じゃなくなっていた。


服の着替えにも“恐怖”がある

ズボンや靴下は、以前なら片足立ちでなんなく履けました。

でも今は、

片足立ちがぎりぎり出来る状態で、
すこしバランスを崩すとそのまま転倒しそうになる。

こうなると、着替えも「作業」ではなく「リスク」になります。

電車で立っているときも、つり革を持たないと踏ん張れません。
体幹が弱く、揺れに反応できないからです。

退院前には想像できなかった現実でした。


お風呂での“段差”が怖い

浴槽に足を上げて入る動作。

これも、思っている以上に難しい。

足が上がらず、バランスも崩れやすい。
浴室内の床は滑りやすく、転倒しそうになったことも一度や二度ではありません。

何とか手で支えて倒れずに済みましたが、
以前の感覚のまま生活していたら確実にケガをしていたと思います。


トイレの「立ち上がり」にも手すりが必要

トイレで座り、立ち上がる。

あたりまえの動作すら、手すりがないと難しい。

“普通の生活動作”が、そのまま“リハビリ課題”になっていく感覚でした。


何よりつらかったのは、“精神面”だった

身体が思うように動かない。

でも、精神面のダメージはもっと大きかった。

「あたりまえにできていたことが、数週間でできなくなる。」

この現実は想像以上に苦しく、今でもできないことがあります。

年齢のせいにすればそれで終わりかもしれない。
でも、これまで普通にできていた行動をしてみると、
“失われたものの多さ”に気付かされるんです。


病院のリハビリだけでは「元の生活」には戻らない

病院のリハビリは、一般的な生活動作にフォーカスしています。

でも、私のように
運動・スポーツを日常にしている人の場合、退院後に“できないこと”が次々に発覚します。

私はマラソン、トレランなどを趣味にしていました。

でも退院後——

  • 走ることができない
  • 不整地でバランスが取れない
  • サッカーボールを蹴ると片足で踏ん張れず転倒
  • 反射が遅れ、急に避ける動作が間に合わない

練習すれば少しずつ戻る。
でも「以前と同じ」には戻りません。

この現実が一番悔しかった。


「もう元には戻れない」という悔しさ

何年もかけて積み上げてきたものが、一瞬で崩れた。

もう元には戻れないかもしれない。

本当に悔しさしかありませんでした。

正直、趣味をやめたほうが精神的には楽かもしれない。
でも私は、もう一度マラソンを走りたい。

だから、辞めずに今もリハビリを続けています。


神経の損傷、薬の副作用——“見えないつらさ”

神経の損傷は、筋肉痛とは違う独特の疲れを残します。

さらに薬の副作用で身体が疲れやすく、
痛み止めでケガに気付かないことさえあります。

やりすぎれば、確実に反動がきます。

だからこそ、自分自身でコントロールしないといけない。


家の中では気付けないことだらけ

家の中で生活していると気付けない「できない動作」が、
外に出ると一気にあふれ出します。

このギャップが、退院後のしんどさを倍増させました。


それでも、生きるリズムは取り戻せる

退院後の生活は、想像以上にしんどい。
これは、表現を盛っているわけではなく、本当の話です。

でも私は、少しずつ生活を取り戻してきました。

完璧に戻れなくても、
“できる形”を模索すれば、人生は前に進める。

以前の基準に縛られる必要はありません。
今の自分に合う目標を立てて、少しずつ積み上げていけばいい。

私はこれからも、自分のペースで回復を続けます。


最後に——あなたへ

退院後の生活がつらいのは、あなたのせいではありません。
むしろ、それが“普通”です。

できない自分を責める必要はどこにもありません。

あなたのペースで、
あなたの身体に合わせて、
あなたの目標をつくっていけばいい。

そして、ひとりで抱え込まないでください。

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この記事を書いた人

会計事務所、事業会社で税務・経理の仕事に従事していました。
40代で脊髄腫瘍になり、手術・リハビリをしつつ、現在はフリーランスで仕事をしています。